ほぼ黒ワンピース生活|双極性障害Ⅱ型の治療ログ

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親の選んだ服を着るしかない

転居まであと1週間を切った。最終登校週、その月曜の朝、長女がソファで泣いていた。



聞くと「お引越しするの、いやになってきた」と。

 

彼女にとってこの家は、生まれたときから住む家である。

小学校には保育園からのおともだちもいて、最近は新しいおともだちも出来て、先生も明るく楽しく良い方で、楽しく過ごしていたんだろう。たまに「こういうことがあって嫌だった」とはっきりと不快の感情も言葉にできていて、担任の先生への相談もしやすかったし、心配も長くは続かず翌日には「もう平気!」と笑顔だった。英語学童については行き渋りが長く続き、難儀したこともあるが「もう学校からちょくせつ行くね。AちゃんとYちゃんが一緒に行こうって言ってくれた」と、結局彼女と友だちとで解決した。

この家で、保育園で、小学校で、彼女は成長した。心身ともに大きくなった。

 

一方で転居に関しては「新しいおうち楽しみ」「新しい学校には校庭にすべりだいもあるもんね。今の学校にはないからなぁ」と家族の二番目くらいに前向きだった。

 

その子が泣いていた。

 

今朝、彼女の涙を思い出しながら洗濯物を干していてふと思った、

「この子たちは、親の選んだ服を着るしかないんだもんな」

と。

 

親の選んだ服を着て、親の選んだ場所に住み、親の選んだ環境に生きる。

赤ちゃんだから、こどもだから、未成年者だからそうするしかないとはいえ、彼女らの中にも「こうしたい」という気持ちはあって当然で、あって当然だと気づいているのに私たちは「親の決めたことだから」と彼女らを従わせようとしている。

「この子たちはここで暮らしたいんだし、私も子どもたちを暮らさせてあげたい」と思って画策したこともあった。だけど無業でかつ女、しかも障害者の私がひとり親家庭を切り回すのは到底無理だと挫折して、結局彼女らに無理を強いることになった。

 

私はもっと足掻くべきであった。

また自分の無力を知る。

 

親の私も私で、夫の転職と転居に対応するにはだいぶ荒れた。荒れた心をなだめる時間が必要で、実母に愚痴り、Twitterで愚痴り、離婚事件に強い弁護士を探し、あらゆる手段を取ったものだった。結局一番よく効いたのは抗不安薬を飲むことだった。そんなんじゃダメだと分かっていつつもそれしかできなかった。

 

そしてまた思う。

私には一応は成熟した脳機能と、抗不安薬とがあるけれど、彼女らには未発達で発達途上の心があるだけであって、この不安をどう解決していけばよいのか。

親の私は何をどうしてあげたらよいのか。自分自身も転居への不安で憂鬱な日が増えている。でも、私しか彼女らの心を守れない。

 

ここで「夫は何をしてるんだよ」と思うけれども、彼はもうここ数年の育児スタンスから戦力ではないし、戦力ではないどころかこの不安と困惑を巻き起こす張本人であり、もう逆に彼のことを考えない方がストレスが少ないという「家族とは」という状況になっている。

 

さておき、

せめて新しい家をきれいに整え、家の周りにはこんなところがあるんだね、学校は楽しいね、じいじとばあばにもすぐ会えるようになったね、と「家」の落ち着きを早く手に入れたいと思う。

 

親の選んだ服を着るしかない彼女たちにしてあげられることは、せめて落ち着く環境を用意することしかないだろう。クリスマスには念願のNintendo Switchも買う。穏やかに暮らせる手立てを尽くす。

 

私とて落ち着かない精神状態ながら、一度は死んだ身だと思って、この転居をやり通すしかない。